問題の背景
- 資本主義の衰退
- 中国の台頭
- アメリカ流の安全保障論
- ロシアの軍国化
資本主義はそれだけでは永遠に成長できるシステムではない。衰退期をどう克服するのかが国際的な課題だ。アメリカ民主党はニューディールやオバマ政権を見てもわかるようにこの領域でもっとも進んでいる。日本、先の大戦はこれを克服することができず戦争に突入し、国家破滅の危機にまで至った。
中国は市場主義を導入し成長期を謳歌している、それにより軍事費も大きくなり日本との軍事バランスが崩れた。
アメリカの安全保障論は武力均衡や核抑止というように軍事力のバランスを保つことが戦争を防ぐという考え方に基づいている。しかし一方では国連があり、戦争は自衛戦争と制裁戦争しかできないことになっており、侵略戦争を始めた国は国連軍が対処に当たる。
しかし国連軍は5大国に拒否権があるため、その中の一国ロシアの暴走を止める力はないし、アメリカが支援するイスラエルもそうだ。
集団的自衛権の問題が日本でうまくまとまらないのは、日本には国家の理念がないからだ。憲法には書いてある。しかしその理念とは逆向きの理念を持っているのが自民党だ。
安全保障論はいわば力の論理であって、政治の論理とは別に存在する。アメリカは下級理論に安全保障論、上級理論に自由主義がある。資本主義に関してはアメリカ国内では共和党はネオリベだが民主党はリベラルだが国際経済になるとどちらもネオリベになる。
日本が唯一他国と違って持っていた理念は9条だった。とはいえ不戦条約や国連憲章ですでに同じことは言われている。
このような多様な論点のあるなかでどういう立場を取ったのか。
自民党は安倍総理の進めていた戦前回帰思考を表面的にはあきらめてアメリカの安全保障論で集団的自衛権を進めた。
対する左翼陣営は戦争そのものに反対という情緒的政策から抜けきれず自衛隊の命がどうとかの話になってしまった。
安全保障論は下級理論と言ったように国の理念を問わないものだから、独裁国家であっても民主国家であっても成立する理論だ。だから問題は集団的自衛権でどういう国と組むのかということに他ならない。
安倍総理の考え方ではアメリカとは組めない。組めるとすれば政治理念ではなく経済的軍事的力という問題に過ぎない。
集団的自衛権でより安全になるというのもアメリカ的思考であって、9条を守っているということはひとつの正義であってひとつの抑止力になるが、こういうことを一顧だにせずに決めてしまった。
政治に求められているのは国際社会の流れを見据えた上での国家の理念の提示とその対決だったがどちらの陣営もその能力が不足していた。